優しい眼鏡でわたしを救う話
初めて降りたJR駅で出会った、リクルートスーツの彼女。
この人に。
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今日も駄目だ、駄目だった。
前の会社を辞めて1ヶ月。売り手市場なんていうから簡単に転職できると思ったのに。
「あなたの経験がこの仕事でどう活かせますか?」
やったことないんだから知らないよもう!
隣の男の人は経験者だったから、なおさら自分の薄っぺらさが出てしまった気がする。
面接は1対1でしょ!そういうとこだよあの会社!
なんて、相手を下げたところで自分の株は上がらない。わかってる。
社会人3年目で無職なんて。友達にも言えない、親になんて、なおさら。
駄目だ。なんでだ。都会で1人で頑張ってるのに。駄目だ。わがままなのか私は。駄目だ。こんな人生駄目だ。駄目な人生生きてる。
大学卒業の時なんで地元に帰ろうとしなかったんだろう。今は、もうその気持ちも思い出せない。こんな人生じゃない、描いてたものがあったはずなのに。
コンタクトを外して眼鏡にしたらぼやけた視界が帰ってきた。
重たいカバンを部屋に投げ出した。ら、本が1冊投げ出された。
昨日は日曜で、遊びに行った先輩の家で無理くりおすすめされた漫画。これ1巻じゃなく2巻だしもう。
読み始めたけど、なに、ロボットアニメ作りたいの?よくわからないけど観客を納得させられないなら駄目なんじゃない?
『「あのねぇ、あなたがダメだと思うから、この作品はダメなんですよ。」
「大半の人が細部を見なくても、私は私を救わなくちゃいけないんだ。
動きの一つ一つに感動する人に、私はここにいるって、言わなくちゃいけないんだ。」』
視界が、ぼやける。
私が良いと思うなら、この人生は「良い」のか?面接が駄目でも周りと違っても否定されても、私は、私だけを救うためにやってもいいのか?
なら、私はわたしを救う。
私がわたしの人生を「良い人生だね」と言ってやる。
暑い中サボらずちゃんと面接に行って、1年ぶりのパピコはガリッゴリッに冷たくて、コンタクトは痛かったけど眼鏡は優しくて。
今日も良い人生だったよ、わたし!